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世界中のオーディオ/ビデオおよび情報通信技術(AV / ICT)機器メーカーから大きな関心が寄せられていた、IEC 62368‐1:2018(第3版)ベースの欧州規格、EN 62368-1:2020/A11:2020が3月6日に発行されました。EN 62368-1:2020がIEC 62368-1:2018を反映し、欧州共通デビエーションと特別国家条件がアメンドメントNo. 11(A11)に含まれます。

発行時期と共に注目されるのは、低電圧指令(LVD、2014/35 / EU)および無線機器指令(RED、2014/53 / EU)のような製品安全を扱う欧州指令へのAV / ICT機器・部品の適合証明のためにこの規格がどのように活用できるのかというところです。

ULでは、この件を含みIEC 62368-1への移行関連の各種情報をWeb上で発信しておりますので、是非ご活用いただけますようお願いいたします。
UL ToolKit for a smooth transition to IEC 62368-1」 (英語)

 

バックグラウンド

歴史的に、EN 60950-1などの欧州規格が発行され、欧州指令への適合性推定のための整合規格(Harmonized standards providing presumption of conformity)となるべく提案されたとき、ニューアプローチコンサルタントは欧州委員会に代わって規格を監査し、欧州指令の必須要求に適合する整合規格として適切であると推奨していました。 推奨された場合、その規格は欧州連合の官報(OJ: Official Journal)に掲載され、その結果、整合規格として該当する指令の基本必須要求事項への適合を確立するために使用することができるようになります。

2018年以降、EU市場に投入される製品の安全規格のタイムリーな導入と品質の向上を目的として、ハーモナイズドスタンダード(HAS)コンサルタントの新しいシステムが開始されました。 HASコンサルタントは、規格を開発する技術委員会と関連するECサービスの間を仲介者するように機能します。 例えば、CENELECなどの欧州標準化機構(ESO)が起草した文書が、関連するEU調和法で定められた必須要求またはその他の要件をどの程度遵守しているかを評価します。

この新システムへの移行は、当初は比較的簡単であると予想されていましたが、HASコンサルタントが対象規格によって示されるコンプライアンスの「法的確実性」に集中して過去よりも綿密に規格を監査していることにより、実際の新しいプロセスで課題が発生しました。これらのより厳格で集中的な監査により、各種指令の適合性推定に使用する整合規格の承認を得ることが難しくなりました。

 

EN 62368‐1:2020の現状

今回発行されたEN 62368-1:2020は、発行前のドラフト(prEN 62368-1)段階で、LVDおよびREDの整合規格として欧州委員会に提出され、新システムによりHASコンサルタントによる監査を受けて上記のような課題に遭遇しました。

監査の結果、100を超えるコメントが指摘され、それを受けたCENELEC 108X技術委員会ではHASコンサルタントの懸念を解消するためには規格の追加改訂作業をしなければならないことになりました。 コメントの内容は、IEC規格の簡単な修正で対処し得る比較的単純な編集コメントや単なる質問から、IEC 62368-1のいくつかの基本原則に課題を投げかける複雑で技術的なコメントにまで及びました。同様の状況はIEC 62368-3:2017に対応するEN 62368-3でも起こっています。

CENELEC 108X技術委員会は、HASコンサルタントの懸念に対処する最善の方法を検討するとともに、EN 62368-1(および-3)の最新版をいかにしてヨーロッパで有用な規格として位置付けるかの解決策を模索しています。この一環として技術委員会では2つのアンケートを投票加盟国に配布しました。 アンケートでは、HASコンサルタントの監査結果の解決が困難なため、最新のEN 62368-1およびEN 62368-3をLVDおよびREDの整合規格として登録しない可能性に関して意見を問い、さらに既に同指令の整合規格として運用されている現行のEN62368-1:2014(第2版)も同指令の整合規格から取り下げる可能性についても意見を問いました。 最新のEN規格を整合規格として登録しない場合、欧州規格(EN)として出版されても、EUのOJにはリストされません。

規格がOJで参照されない場合、整合規格に適合すれば指令の必須規定への適合性推定を得るという方法に使用できないことになります。そのため、製造業者は、整合規格に依存することなしに、指令の必須規定への準拠を実証しなければならないことになります。その方法はOJに記載されている以外の規格(EN 62368‐1:2020を含む)を使用したり、指令の直接適用、独自の試験方法、通常よりも包括的なリスク評価、またはその他の戦略を単独または組み合わせで使用するようなことになります。 OJにリストされた整合規格を主体にして適合性推定を行う場合に比べて、製造者は指令準拠を証明する上記のようなより多くの追加技術資料詳細を製品ごとにしっかりとテクニカルファイルにまとめる必要があります。

CENELEC 108Xアンケートの結果とそれに続く加盟国の投票の結果、EN 62368-1(3版対応)およびEN 62368-3(初版対応)は、OJへの掲載を追求せず現在の状態で発行する方向で可決し、その結果EN62368-1:2020が3月6日に発行され、EN62368-3:2020も間もなく(3月中の見込み)発行される見込みです。 さらに、現行のEN 62368‐1:2014は、EU整合規格としてOJに引き続き記載されることが決定しました。

並行して、CENELEC 108Xは、HASコンサルタントの懸念を満たし、EN62368-1及びIEC62368-3の将来の版が整合規格としてOJに掲載され欧州指令の適合性推定に活用されるように、現状の内容を改訂する規格開発のNew Workを提案し、CENELEC内の多数の国内委員会がこの開発作業の支援を表明しています。

 

Moving forward

冒頭で述べましたように、EN IEC 62368‐1:2020 / A11:2020が2020‐03‐06に発行されたことにより、現在は旧版のEN IEC 62368‐1:2014と最新版が両方使用できることになりますが、旧版の削除期限(DOW)は2023‐01‐06になります。旧版のEN 62368‐1:2014に適合する製品はその日までに最新版のEN IEC 62368‐1:2020 / A11:2020への移行を完了しなければならないことなります。

前述したように、この最新のEN 62368-1規格はOJに記載されないため、LVDへの適合性の推定を確立するために単独で使用することはできません。 結果として、指令への準拠を示すために、EN規格適合のみならず、指令の規定の直接適用、独自の試験方法、通常よりも包括的なリスク評価など、より多くの実証が必要になります。

一方、EN 62368‐1:2014は、LVD等の整合規格としてEU OJに引続きリストされ、適合する製品は、従来通りLVD等への適合性推定が認められます。

現時点では、ヨーロッパへの市場参入のために、AV / ICT機器の製造者が適合性推定のために使用できる整合規格としては、EN 62368‐1:2014並びに最新版のEN 60950-1、EN 60065も従来通り使用することができます。 整合規格としてOJにリストされない最新版のEN IEC 62368‐1:2020 / A11:2020は、前述の追加技術資料で補足することで使用できます。

EN 60950-1及びEN 60065はLVD等の整合規格としての有効期限は2020-12-20ですので、それまでにその時点で有効な規格へ移行する必要があります。

さらにEN 62368-1:2014に適合している機器は2023-01-06までにEN 62368-1:2020へ移行する必要があります。

2023-01-06の時点でEN62368-1:2020が現状のままOJに整合規格として掲載されていない場合、それまでの適合性推定と異なりリスク評価を含む追加の技術資料で適合性推定を補足する必要があります。

前述のように、CENELEC 108Xが最終的にHASコンサルタントの懸念による規格の問題点を解決し、EN 62368-1の将来のバージョンがOJにリストされて再び指令への適合性推定のために使用できる整合規格となるまでこの状況が続くことになりますので、 その将来のバージョンが早期に(2023-01-06以前)整合規格となることが期待されます。

現在の状況は流動的であるため、AV / ICT機器/部品の製造者は、欧州の状況に加えてより広範で世界的な62368-1への移行を引き続きモニターし、それに応じて行動する準備をする必要があります。 日本、中国、韓国、台湾、および他のいくつかの国は、IEC 62368-1 第3版に対応する国家規格を準備中で、来年内には製品認証に利用可能と予想されますので、製造業者がこれらの規格開発状況をモニターし、それらをグローバルな市場アクセスのための戦略的ビジネスおよび認証計画に織り込むことが重要です。

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