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リチウムイオン蓄電池(二次電池)はスマートフォン、ノートパソコン等を始め、幅広い電子・電気機器に搭載されています。小型で軽量である特性を活かし、ポータブル機器の利便性を急速に増大させ、生産性の向上・生活の質的改善などに大きく貢献してきました。近年では、電気自動車 や鉄道などの交通機関の動力源や、工業及び住宅用蓄電装置としても、その応用の幅を広げています。

一方、リチウムイオン蓄電池の利用が普及するにつれ、発火、破裂などのインシデントもまた発生してきました。2019年3月の経済産業省の報告*では、日本国内で発生したリチウムイオン蓄電池の異常による製品事故は近年増加傾向にあるとし、ノートパソコン、モバイルバッテリー、携帯電話機(スマートフォンを含む)の事故は、多くがリチウムイオン蓄電池の異常によるものとされています。

 

リチウムイオン蓄電池の仕組みから考察

リチウムイオン蓄電池のインシデントの発生メカニズムを考察するにあたり、まず構造の面から確認をしたいと思います。リチウムイオン蓄電池の電極は、正極にリチウム酸化物、負極に黒鉛等が層状に構築されており、セパレータにより正極と負極を隔てています。充電時には、正極から負極に電子が移動するとともにリチウムイオンが正極から負極に溜め込まれます。放電時には電位差を解消する為に負極から正極に向かって電子が流れ、負極内にためられていたリチウムイオンが正極に移動する仕組みとなっています。リチウムイオン蓄電池に利用される材料は、負極ではCarbon, Graphite、正極ではLiCo2, LiFePO4, LiMn2O4などが一般的です。そのほかの材料として、セパレータではPEまたはPP、電解液が含まれます。また、電解液成分には以下(図1)が含まれることがあります。

図1

上記のようなリチウムイオン蓄電池の構造において、仕組み上、熱暴走のリスクを回避することは重要です。具体的に、熱暴走が起こるプロセスは以下の通り考えられます。

  1. 内的または外的要因(内部短絡、過充電、外部熱供給、内部化学反応など)により熱が発生します。(図2 ①)通常、熱の流出により反応が鈍化すれば、熱暴走に至りません。
  2. ①に対して、熱の流出や反応の鈍化が十分に起こらず、内部で発熱反応として化学反応、材料分解、酸素の発生が誘発されます。
  3.  ②よりリチウムイオン蓄電池内の反応率が上昇し、温度上昇とともに影響される材料など反応源が増加します。
  4. ③にて発生した熱が①のように働き、サイクルが繰り返されることで熱暴走が発生します。

図2

このように、リチウムイオン蓄電池の利用において、内的及び外的要因による熱の発生を完全に排除できない以上、熱暴走の可能性は否定できません。

一方で、リチウムイオン蓄電池自体を危険なものとして認識してしまうのは、早計と言わざるを得ません。後編では、リチウムイオン蓄電池利用製品における、不具合が起こる根本的な原因と、安全なバッテリーシステムへのアプローチを検討していきたいと思います。

*経済産業省 平成30年における製品事故の発生状況及び課題
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/seihin_anzen/pdf/007_02_00.pdf

後編はこちら

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